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11 労働契約の終了(解雇,雇止め,退職)

労働契約の終了

 「期間の定めのない労働契約」が終了するには,
労働者が自ら労働契約を解約する辞職(この場合,労働者が使用者に解約を申し出てから2週間が経過することによって,労働契約が終了するのが原則です。)
 労働者と使用者間で解約を合意する退職(退職には,依願退職や経営上の都合により,使用者が労働者に退職することを勧奨し,労働者が同意する退職勧奨・希望退職があります。)
 
 使用者が一方的に解約する解雇があります。
「期間の定めのある労働契約」(有期労働契約)の場合,原則的には,期間の満了により自動的に終了します。
 ただし,やむを得ない理由がある場合は,期間の途中であっても契約を終了させることができますが,使用者は,少なくとも30日前の解雇予告又は解雇予告手当の支払が必要です。使用者側の事由によっては損害賠償として,残存契約期間の賃金相当額の支払わなければならない場合もあります。

解雇

 解雇とは使用者が一方的に労働契約を解約する行為です。労働者が解雇されると自身や家族の生活に大きな影響を受けることから,使用者の解雇権は,労働基準法等で大幅に制約されています。

【解雇理由の制限】
 使用者が労働者を解雇できるのは,客観的に合理的な理由があり,それが社会通念上相当であると認められる場合に限られます。認められない場合は,解雇権の濫用として解雇は無効です。
 妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は,「妊娠・出産・産前・産後休業等による解雇でない」ことを証明しない限り,無効です。
【整理解雇】
 使用者が,経営上の理由により,人員整理のために行う解雇をいいます。
<整理解雇有効性の判断基準>
・人員削減の必要性:人員削減が会社の運営上やむを得ないものであること
・解雇回避の努力:新規採用中止,希望退職者の募集,対象労働者の配転,出向先を探す等の解雇回避努力をすること
・人選の基準:解雇対象者の選定が客観的,合理的な基準に基づくものであること
・手続の妥当性:使用者が労働組合に対して整理解雇の必要性やその方法等について説明し,労働者に納得してもらう努力をすること
→ 労働相談事例集の「業績不振を理由とする解雇」を参照する
【解雇時期についての制限】
 労働基準法は,使用者に労働者が解雇から特に保護する必要がある期間について解雇を禁止しています。
 労働者が業務上負傷し又は疾病にかかり,療養のため休業した場合,休業期間とその後30日間 ・女子労働者の産前産後の休業期間とその後30日間
次の場合は,例外的に解雇が許されます。
・業務上負傷し又は疾病にかかり,療養している労働者で療養開始後3年を経過した労働者に,使用者が「打切補償」をした場合
・天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合
【解雇手続についての制限(解雇の予告)】
使用者が労働者を解雇する場合には,少なくとも30日前に予告するか30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。
<解雇予告の必要でない場合>
・天災事変,その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった場合
・労働者の責に帰すべき事由がある場合
<解雇予告の必要でない労働者>
・日々雇い入れられる労働者で1箇月以内の者
・2箇月以内の期間を定めて使用される労働者
・季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される労働者
・試みの試用期間中の労働者で14日以内の者
【その他法律による制限】
 以上のほかに労働基準法,男女雇用機会均等法,育児・介護休業法,個別労働紛争解決法,労働組合法,公益通報者保護法で解雇の禁止を定めています。
<差別的な解雇の禁止>
・国籍,信条,社会的身分を理由とするもの
・女性労働者が婚姻したこと
・女性労働者が妊娠,出産し,産前の休業を請求し,産前,産後の休業をしたこと,その他妊娠,出産に関する事由
・一定の権利を行使したことを理由とする解雇の制限
・使用者の労働基準法違反の事実を労働基準監督署に申告したこと
・企画業務型裁量労働の対象労働者で対象労働者になることに同意しないこと
・育児・介護休業の申出及び育児・介護休業を取得したこと
・看護休暇の申出及び看護休暇の取得をしたこと
・労働組合を結成し,加入し,正当な組合活動を行ったこと
・派遣労働者が,派遣元事業主及び派遣先事業主が労働者派遣法に違反した事実を厚生労働大臣に申告したこと
・労働者が個別労働関係紛争に関して助言又は指導を求め,あっせんを申請したこと
・公益通報をしたこと

解雇理由の明示

労働者が,解雇の予告がされた日から退職の日までの間において,その解雇の理由について証明書を請求した場合,使用者は遅滞なく交付する必要があります。

雇止め

 使用者が「期間の定めのある労働契約」(有期労働契約)の満了時に労働契約の更新を拒否することを「雇止め」といいます。「期間の定めのある労働契約」は契約期間の満了により終了するのが原則ですが,繰り返し更新された場合,「期間の定めのない労働契約」と同様とみなされ,正当な解雇理由と解雇手続が必要となる可能性が生じます。
 平成24年8月10日に公布された「改正労働契約法」で,最高裁判最高裁判所の判例で確立したルールがそのまま法律となり(雇止め法理の法定化)以下のいずれかに該当する場合で,使用者の雇止めに合理的な理由がない場合は,雇止めは無効となります。

・過去に反復更新された有期労働契約で,その雇止めが無期労働契約の解雇と同視できる場合
・有期労働契約の満了時に,労働者が契約更新されると期待することに,合理的な理由がある場合
 有期労働契約の更新手続きが形式的になっており実質的に無期労働契約と変わらない状況であったり,労働者に対し更新が見込まれるような発言を会社側がした場合には,上記の条件にあてはまることがあります。

労働契約終了後の手続

【金品の返還】
 労働契約は,退職又は解雇等によって終了しますが,使用者は,労働者から請求があった場合,7日以内に賃金を支払い,積立金,保証金,貯蓄金など,労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。

【証明書の交付】
 使用者は,労働者が退職する場合,次の事項を記入した証明書を交付しなければなりません。ただし,使用者は,労働者が請求しない事項について記載することは禁じられています。
●使用期間 ●業務の種類 ●労働者の地位 ●賃金 ●退職の事由(解雇の場合はその理由を含む。) 


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