5 労働時間
法定労働時間
使用者は,労働者を,休憩時間を除いて1週40時間,1日8時間を超えて働かせてはなりません。法定労働時間を超えて労働者を労働させる場合には「時間外及び休日労働に関する協定(36協定)」(「時間外・休日労働」の項を参照)を締結する必要があります。
労働時間の特例
常時10人未満の労働者(パート・アルバイト含む)を使用する,
・商業(卸・小売,理・美容,倉庫,駐車場,不動産管理,出版(印刷部門を除く。)等)
・映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)
・保健衛生業(病院・診療所,保育園,老人ホーム等)
・接客娯楽業(旅館,飲食店,ゴルフ場,遊園地その他の接客娯楽業)
等では,1週44時間,1日8時間とする特例措置が認められています。
変形労働時間制
変形労働時間制とは,業務の繁閑や特殊性に応じて,労働者と使用者が工夫しながら労働時間の配分などを行い,繁忙期の残業を減らし,全体として労働時間の短縮を図るもので,現在,次の4つの制度があります。
【1箇月単位の変形労働時間制】
1箇月以内の一定の期間を平均して,1週間の労働時間が40時間(特別措置対象事業場は44時間)以下の範囲内において,1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
この制度を採用する場合は,①就業規則などを変更すること,②労使協定の場合は,労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
【フレックスタイム制】
1箇月以内の一定期間(清算期間)の総労働時間をあらかじめ定めておき,労働者がその範囲内で各自の始業及び終業の時刻を選択して働く制度です。 この制度を採用する場合は,①就業規則等で,始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねることを規定し,②労使協定において,㋑対象となる労働者の範囲,㋺清算期間,㋩清算期間中の総労働時間,㋥標準となる1日の労働時間などを決める必要があります。
【1年単位の変形労働時間】
1年以内の一定期間を平均し1週間の労働時間が40時間以下(特別措置対象事業場も同じ)の範囲内において,1日10時間,1週52時まで働かせることができる制度です。 この制度を採用する場合は,①労使協定を締結して労働基準監督署長に届け出て,②就業規則等の変更が必要です。
【1週間単位の非定型的変形労働時間制】
規模30人未満の小売業,旅館,料理・飲食店の事業において,労使協定により,1週間の労働時間が40時間以下の範囲であれば,1日10時間まで働かせることができる制度です。
この制度を採用する場合は,①労使協定を締結し,労働基準監督署長に届け出て,②就業規則等に明記し,③前の週までに各自の労働時間を書面で通知する必要があります。
時間外・休日労働
使用者は,法定労働時間を超え又は休日に労働者を使用することはできません。ただし,次の場合は法定労働時間を超え又は休日に労働者を使用することが認められます。
①災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合(ただし,所轄労働基準監督署長の許可が必要)
②官公署の事業に従事する国家公務員,地方公務員が公務のため臨時の必要がある場合
労使協定(36協定)を締結し,次の要件を満たした場合
イ 所轄労働基準監督署長へ届出ること。
ロ 時間外労働が,厚生労働大臣が定めた限度時間内であること(下記の「時間外労働の延長の限度」の表を参照)。
ハ 法律で定められた割増賃金が支払われること(「時間外,休日及び深夜の割増賃金」の項を参照)。
【労使協定で定める事項】
・時間外又は休日の労働をさせる必要のある具体的事由
・対象労働者の業務,人数
・1日についての延長時間
・1日を超える3箇月以内の期間及び1年間についての延長時間又は労働させることができる休日
・労使協定の有効期間
この労使協定を,労働基準法の条文にちなんで「36協定(さぶろく協定又は,さんろく協定)」と呼んでいます。
【時間外労働の延長の限度】
期間 |
一般労働者 |
3箇月を超える1年単位の
変形労働時間制の対象者 |
1週間 |
15時間 |
14時間 |
2週間
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27時間
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25時間
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4週間
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43時間
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40時間
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1箇月間
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45時間
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42時間 |
2箇月間
|
81時間
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75時間
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3箇月間
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120時間 |
110時間
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1年間
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360時間
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320時間
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時間外,休日及び深夜の割増賃金
時間外,深夜(原則として午後10時~午前5時)に労働させた場合は,2割5分以上,法定休日に労働させた場合には3割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。
時間外労働と深夜労働が重なった場合,また,休日労働と深夜労働が重なった場合は,それぞれ5割以上,6割以上の割増賃金を支払う必要があります。
2010年4月から,1カ月に60時間を超える時間外労働に対しては5割以上の率で計算した時間外割増賃金を支払わなければならないことになりました。
割増賃金の基礎となる賃金には,家族手当,通勤手当,別居手当,子女教育手当,住宅手当,臨時に支払われた賃金,1箇月を越えるごとに支払われる賃金は算入されません。
なお,割増賃金の計算の基礎となる賃金に含まれるかどうかは,名称でなく内容によって判断されます。