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持ち帰り残業はできるか


 Cさん(24歳)は,U株式会社に入社して3ヶ月目です。初めての業種で慣れないことも多く,なかなか仕事を覚えることができません。最近,上司の風当たりも強く,先輩にも愛想をつかされているように思えています。その日の報告書を書いたり,翌日の会議の準備をする時間がとれないので,退社時間の午後10時まで社内で残業した後,家に持ち帰って書類作成をやっています。Cさんは,自分の作業が遅いせいだと思っているので,会社に残業代を請求するつもりはないとのことですが,周りの友人が心配して一度相談してみた方がいいと言われ,相談に来ました。

アドバイス


 会社の指揮命令下に置かれていることが労働時間の原則です。したがって,社員が勝手に仕事を持ち帰っても労働時間とはならず,会社が残業代を支払う義務はありません。

 ただし,業務時間内では明らかに終えることができない量の業務を指示された社員が仕事を持ち帰らざるを得ない場合,社員が仕事を持ち帰っていることを上司が知っていながら放置している場合には,労働時間とみなされることがあります。無理な業務指示の結果,過重労働による労災の原因として認められるケースがあります。

 会社にとっては,持ち帰り残業は,情報漏洩の原因,労災裁判の原因になりやすく,リスクが高いものです。社員の勝手な持ち帰りを完全防止できなくても,できるだけ禁止の方向で対策を取るべきであり,黙認は後の問題を考えるとお勧めできません。どうしても持ち帰り残業が必要な場合は,本人の同意が得られ,情報管理がしっかりできる条件の下で行うことが大切です。



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