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倒産による未払い賃金について


 Oさんの努めているH社は業績不審で倒産したが,給料が 2ヵ月分未払いのまま。退職金も規定はあるが支払えないと言われている。
 こうした状況に対する補償があると聞いたが,どのようなものか。


アドバイス


 「未払い賃金の立替払制度」は,企業が倒産し賃金が払えないまま退職を余儀なくされた労働者に対して,その未払賃金の一定範囲について,独立行政法人労働者安全健康機構が事業主に代わって支払うものです。(賃金の支払の確保等に関する法律<賃確法> 第三章 未払賃金の立替払事業)

■対象となる倒産
 倒産は,法律上の倒産である破産・会社更生・民事更生・会社整理・特別清算と,事実上の倒産である私的整理に分類されます。
 
  1. 1年以上事業活動を行ってきた会社が,法律上の手続きをとって倒産した場合
  2. 中小企業に限り,私的整理により事実上倒産状態にあることを労働基準監督署が認定した場合。(認定基準は,①事業活動が停止し,②再開する見込みがなく,③賃金支払能力がないことです。)

  *中小企業の範囲(中小企業基本法による)
   製造業・建設業・運輸業…300人以下又は資本金 3億円以下
   卸売業…100人以下又は資本金 1億円以下
   サービス業…100人以下又は資本金 5千万円以下
   小売業…50人以下又は資本金 5千万円以下

■対象となる労働者
  1. 企業の倒産に伴い退職し,未払賃金が残っていること。(ただし,未払賃金の総額が2万円未満の場合は立替払を受けられない。)
  2. 倒産について,裁判所や労働基準監督署長に申し立てた日から起算して6ヶ月前の日以後2年間の期間内に退職していること。

■対象となる未払賃金の範囲
 その退職日の 6ヶ月前の日からの賃金又は退職金の未払い分
 なお,毎月の賃金から控除されている社宅料や貸付金返済金は未払賃金 から除かれる。

■限度額
 立替払される額は,未払い賃金の総額の80%相当額であり,退職日にお ける年齢に応じて上限額が定められている。
退職日における年齢区分  未払賃金の上限額  立替払の上限額 
退職日における年齢 45歳以上
30歳以上45歳未満
30歳未満 
370万円
220万円
110万円 
296万円
176万円
88万円 

■証明・認定・確認等及び請求書

  1. 破産等の場合は,管財人・清算人・管理人が証明者となる。
  2. 中小企業の事実上倒産の場合は労基署長に確認申請書を提出する。<退職日の翌日から6ヶ月以内に申請が必要>
  3. 立替払の請求書は労働者健康福祉機構に提出する。
  4. 請求できる期間は,裁判所の破産等の決定の日又は労基署長の認定の日の翌日から起算して2年以内。

■倒産の兆しがある場合にしておくべきこと
  1. 労働組合をつくる。
  2. 夜逃げ型が増えて,働いた日の認定に困難が生じる場合があるのでタイムカードのコピーや,手帳やカレンダー等に労働日と労働時間を記しておくこと。
  3. 未払賃金の金額確定のために過去の給料明細書を保存しておくこと。
  4. 賃金の遅配・欠配・未払いが発生したときは,会社から未払い証明書(社印のあるもの)をもらっておくこと。

■すでに倒産した場合
 倒産したからといって無条件に解雇は認められない。合理的理由が必要で,偽装倒産や計画倒産等,雇用を不当に奪う要素があれば解雇は認められない。また,解雇予告か予告手当の手続きは当然行われなければならない。
 偽装倒産等が疑われる場合の対応として,
  1. 労働組合をつくる。
  2. 職場や施設,資材,商品を確保する。
  3. 外部の債権者がドサクサまぎれに,会社財産を持ち出すのを防止するため従業員が結束して泊り込み体制(24時間)で監視する。
  4. 実力で債権者が持ち出そうとするときは,窃盗として警察を呼ぶこと。
  5. とにかく行政の相談窓口や労働団体に速やかに相談し,協力を仰ぐ必要がある。


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