労働相談事例集
賃下げ,手当てカット

 Aさんは,従業員数30名でほとんどが営業社員の小売業で勤務。勤続 20年のベテラン社員で課長職。労働組合はなし。就業規則もみたことがない。
 会社から突然に「固定給から歩合給に変更すること」「課長職を解き,契約社員にする」旨通告された。歩合給の基準は,明らか従来の賃金を得られるようなものではなく,半額以下にもなるような大幅な賃下げをもたらす。50歳以上の者が同様の変更を通告されたようである。出張旅費や手当などの条件も会社負担が減り,高速道路通行料の本人負担や宿泊費減額などにより本人負担が大幅に増えた。


アドバイス

 不況で会社経営が苦しくなり,企業を存続させるために様々な企業努力をされている中で経営者が賃金ダウンの提案をする場合も有りますが,相談のケースでは,「経営が苦しくなった」と言いつつも,他に特別な経営努力はなされず,社長や子息は高級車を買い替え,住宅を新規購入さえしています。

 労働条件は労働契約の内容であり,契約当事者である労働者と使用者が対等の立場において話し合い,合意により成立するものです。(労基法第2条)
 個別の労働契約は各種法令(労基法,最低賃金法,労働安全衛生法,雇用機会均等法など)の規制を受け,とりわけ労基法は個別労働関係の基本であり,労働条件の最低の基準を定めたものであり(労基法第 1条) ,たえずその基準を上回る努力が求められています。
 また,就業規則や,労働組合が有る場合その組合との間に締結された労働協約による規制を受けるが,それらが労基法に定める最低の基準を下回るものであってはならないことは言うに及ばない。相談のケースは労働組合もなく,就業規則すらその存在が知られていない状況にあるため以下のような諸点に基づいて判断されるべきと考えます。    

1,充分な説明の下に話し合われ,相互に納得の上で合意が成立したのか。
 この点では,「理由,根拠が充分に説明されていない」「一方的な通告に終わっている=本人の承認なし」に行われており,労基法第2条に違反し,無効となります。
2,賃金規定の見直しも,明らかに賃金の大幅な引き下げを結果するものであれば違法であり,これも本人の同意がない限り無効といえます。
3,前記を含めて大きなポイントになるのが,このような条件変更を行う合理的理由,根拠が示されているかどうかです。一般的に企業の状況が思わしくないことや赤字であることだけでは充分ではありません。このような変更を加えなければ会社運営そのものが危機に瀕するとか,大きな支障が生じることなどが具体的に説明され,改善のための手立て,努力がなされていることが条件といえます。相談の場合,そのような努力経過もみられませんし,合理的理由があるとは言えないでしょう。
4,出張旅費や宿泊費も労働条件の一部です。同様のものとして扱うべきものです。