コラム 第20回


紹介予定派遣制度について
 2000年12月に、いわゆる「紹介予定派遣」がスタートしました。 これは
「派遣就業終了後に派遣先に職業紹介することを予定してする労働者派遣」
と定義されており、労働者派遣の一形態です。いうまでもなく派遣労働者は、
労働契約を締結している会社(派遣元)で働くのではなく、派遣元から派遣さ
れた会社(派遣先)で指揮命令を受けて働くという形態をとりますから、派遣
先と労働者の間には労働契約関係が存在しません。紹介予定派遣においても、
この点については何ら変わりがないのですが、派遣就業が終了した後に、派
遣元が派遣先にその労働者を紹介することが予定されており、その結果、当
該労働者が派遣先に雇用される可能性があるという点にこの制度の特徴があ
るといえます。もともと派遣労働は自分の希望する日あるいは時間に就業で
きるという比較的柔軟な働き方が可能になりますから、派遣労働者の中には
比較的長期にわたって派遣就業という形態を希望する人が多いといわれてい
ます。しかし他方で、派遣をワンステップとして派遣先で正社員として雇用
されること(派遣先と労働契約を締結すること)を望む人も少なくはありませ
ん。こうした正社員への転換を望む派遣労働者の期待に応えるために用意さ
れたのが、まさにこの制度なのです。さらに最近では、若年層の就職率の低
下が特に問題視されていますが、こうした若年層に対して職業経験のチャン
スを提供するという点においても、大変注目されている制度です。では、紹
介予定派遣の内容をもう少し詳しく見ていきましょう。
 紹介予定派遣は、いわゆる労働者派遣事業と職業紹介事業を兼業する場合
の許可要件について定めた通達のなかで規定されているのみで、実は法律上
の根拠を有しているわけではありません。もともと同一の事業者が労働者派
遣と職業紹介を別個に独立した事業として行うこと自体は問題がないのです
が、同通達において「求職者を職業紹介する手段としての労働者派遣」を事
業として行うことが禁止されています。したがって、紹介予定派遣は、派遣
先への職業紹介が派遣就業終了後になされるという限定つきで、例外的に認
められた制度といえます。
 この制度を利用するためには、まず派遣元企業が派遣事業と職業紹介事業
の2つの許可を得ていることが必要であり、また紹介予定者としての登録や
雇い入れは、当該労働者の申出・同意によるものでなければなりません。紹
介予定派遣は労働者派遣の一形態ですから、派遣就業終了後の職業紹介の段
階に至る前においては、労働者派遣法の規制を受けることとなります。した
がって、(1)派遣先による事前面接や履歴書の送付要請(派遣法26条7項「派
遣先による派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止(努力義務)」)
や(2)派遣元から派遣先への履歴書の送付(派遣法24条の3「個人情報の保護」)
は、従前どおり派遣就業が終了するまでは不可能とされています。 また(3)
派遣先・派遣労働者の求人・求職の意思等の確認、派遣先による求人条件等
の明示についても、原則、派遣就業が終了するまでは不可能とされています
(特例として、派遣就業終了予定日と直接雇用予定日が近接している場合に
ついては、派遣就業終了予定日の2週間前から可能とされています)。ただし
派遣労働者が、派遣就業を行う派遣先として適当か否かを判断するために派
遣先を訪問することや、履歴書を送付したり、仮に派遣先に雇用された場合
における労働条件等の確認をすることは可能とされています。このように、
派遣就業終了前における労働者側からの履歴書送付行為等は認められている
ものの、派遣先への雇用を前提とした紹介予定派遣においてまで労働者派遣
法の規制を全面的に適用することについては、紹介予定派遣の円滑な運用の
妨げになるといった意見もあり、実際、(1)(2)の点については派遣労働者・
派遣先企業の間でその見直しを求める声が多くなっています(日本人材派遣
協会「2002年派遣スタッフ及び派遣先実態調査」平成14年10月)。
 紹介予定派遣は、比較的新しい制度ということもあって、実施例はそれほ
ど多くありませんが、最近の調査では、派遣形態で就労する労働者の約75%
が、また派遣先企業の約53%が、紹介予定派遣を「利用したい」との回答を
示しており、制度に対する関心自体は高いと思われます(前記調査結果)。こ
の制度は、派遣労働者、派遣先企業の双方にとって、派遣就業を通じて、比
較的十分な時間をとって適性・相性を判断できるというメリットがあります
から、今後さらにそれを十分に生かせるような形での制度整備がなされれば、
積極的な活用が期待できそうです。