6.22JR尼崎事故を検証する京都シンポジウム開催

 六月ニニ日、京都市中京区のラボール京都ホールで「JR尼崎事故を検証するシンポジウム」が開催された。主催は、1047名の解雇撤回・地元JR復帰をめざす闘いをともに闘っている「国鉄清算事業団闘争勝利をめざす京都共闘会議」。

西日本初の取り組みとして大きな関心がもたれ、会場満席の市民・百五十人で様々な角度から、このJR発足以来最大の惨事を検証し、運動方向をさぐった。

シンポジウムは国鉄京都共闘・佐々木眞成事務局長代行の司会開会、百七名の犠牲者への黙祷から始められた。

続いて主催者を代表して、国鉄京都共闘・大平勲代表委員(京都総評議長)が、「根本的解明がなされないまま、JR福知山線の再開がされている。『のどもと過ぎれば』の感が否めない。1047名の問題とあわせ、今日は問題を掘り下げたい」と挨拶。シンポジウム・コーディネーターの国鉄京都共闘・荒川英幸事務局長(国労弁護団)のパネリスト紹介でさっそくシンポジウムは開始された。

パネリストのフリージャーナリスト・立山学さんは、今回の事故を「国鉄分割民営化殺人」と喝破し、「国鉄分割民営化が尼崎事故の原因だと言わない人は、すべてうそだ」と自説を展開し、「『JR東日本や東海会社が儲かっても、立地条件からして当然となり、(他はもともと厳しいから)JR西日本が競合(強豪)私鉄各社を出し抜いてスピードを売りにして勝利したとき、国鉄分割民営化の成功といえる』との位置づけで、JR発足以来18年間走りぬいて破綻したこと。JR西に君臨してきた井手が『JRになれば会社の大損になるから、安全には民間の方がいい』といってきたことがウソであったことが白日のもととなった。井手たちの総入れ替えを。市場原理によって安全コスト低下競争が起きている。このままなら、新幹線で大事故が起こる。イギリスに学んで、分割民営化の総決算をして、再国有化を」と訴えた。

九一年の信楽高原鉄道事故の遺族らでつくるTASK(鉄道安全推進会議)事務局長の佐藤健宗弁護士は、信楽事故を振り返りながら、「学ばない組織は手ひどいしっぺ返しを受ける」と、余部事故に学ばず、信楽事故に学ばなかったから今回の事故を引き起こしたと発言。「安全対策の軽視(ATS-Pの設置の遅れとその原因)、硬直した組織(日勤教育などによる恐怖支配とその自己目的化)、硬直した組織と危険情報の潜伏化、安全文化と対局的な組織に固定化」の四点を「尼崎事故の背景にあるもの」と捉えた。そのうえで、報告する文化・正義の文化・柔軟な文化・学習する文化の四つの「安全文化の確立」を提起した。

続いて、JR福知山線を再開後運転したJR西日本大阪電車区の青木達夫運転士は「福知山線ではダイヤに多少の余裕が生まれ、一時のような『日勤教育』も緩和されたと、現在の会社の状況を報告。ただ、1991年では221.2キロであった一人平均常務が2004.3.13には261.3キロまで伸びている状況などを詳細な調査票を示しながら訴え、極限までの労働条件にあること、保安装置もATS-Pでも不十分で、新幹線なみのATCが必要な過密ダイヤであることを暴露した。

最後まで追求された遺族・被害者の参加は困難を極め、最愛のお嬢さんを失った藤崎光子さんからの文書発言となった。藤崎さんは赤裸々な被害者・遺族の状況を語りながら、十八日のJR西日本の説明会にふれ、一方的なそのやり方・態度に怒りながら、JRが示した「奨学金制度」新設の明確化を要望された。

閉会・まとめは国鉄京都共闘・萬井隆令議長(龍谷大学法学部教授)。毎日、JR湖西線を通勤で使って、「列車の遅れになるので『駆け込み乗車』をやめてください」と日に何度も言われ、客の安全等考えもしないJR西日本に腹立たしい思いをしていると紹介された。多くの市民的関心を集め、マスコミ取材もたくさんあり、今後の運動の反転攻勢の契機となった。