京都総評第63回定期大会あいさつ        京都総評 議長  大平 勲

 おはようございます。京都総評第63回定期大会の開催にあたり、府内各地の単産・地区労協からご参加いただいた代議員・傍聴者のみなさん。たいへんご苦労さんです。 また、中央からの全労連・全労協はじめ多忙な中お越しいただいた来賓のみなさん方に心からお礼申し上げます。 さてみなさん、今大会は郵政民営化法案の否決による解散・総選挙の真っ只中での開催となりました。従って、私は今日一日の討論を含む大会を通して代議員の皆さん方が、歴代の自民党政権の中でも際立ったファショ的体質を顕在化させる小泉内閣、そのもとに強行されている「構造改革」という名の労働者国民いじめの施策に対して真っ向から立ち向かい、私たちの声が届く政治に転換していく一大チャンスとして深く認識し、決起の腹固めを確かなモノにしていく機会となることを大いに期待するものです。 「改革を止めるな」と声高に叫ぶ小泉内閣の「構造改革」なるものは、そのなかみをみてもその手法をみても私たち労働者にとって断じて許し難いものであり、今度の選挙戦で「いい加減にしろ!」の厳しい審判をくださなければなりません。小泉内閣の4年4ヶ月は、リストラや不安定雇用、低賃金、長時間過密労働などを強要し労働者をモノとして扱い、保険と名の付くものはすべてその負担を増やすなど私たちに耐え難い犠牲を強い、見えない弱者をたくさん生み出し、その一方で大企業や大金持ちには税負担を軽減するなど「特権階級の利益優先」の政治スタンスをとり続けました。加えて許し難いことは、これらの痛みに耐えれば希望の明日があるという欺瞞的言い分の手法です。こうした論法は、昭和の初期に金輸出を解禁し「明日伸びんがために今日縮む」としたデフレ政策をとり一定の国民的支持を得て、その後戦争への道を歩み始めた民政党初代総裁の浜口雄幸内閣の手法に類似するところがありこの歴史の轍を踏まない闘いが今展開されているのです。 失業者が少し減った、賃金もやや向上したと言いますが、これらは事実でもないし私たちの生活実感では毛頭ありません。過日発表された総務省の7月の労働力調査でも失業率は再び悪化し4.4%。非正規雇用は全体の1/3を占め最悪の水準にあり小泉内閣になって正規労働者が222万人減り、非正規労働者が351万人増えたのが事実です。とりわけ24才以下の若者は2人に一人が非正規雇用となっています。こうした背景には大企業が労働者一人リストラすれば税金を100万円減額するという「産業再生法」があり、この間の派遣法などの労働基準法の改悪があります。賃金が僅かにアップしたのは大企業の一過性の一時金のみであり、勤労者の家計では年収約50万円の落ち込み、先日出された今年度の人事院勧告もまたもやマイナスとなりベースアップという春闘用語はもはや死語となりつつあるのが実態です。こうした欺瞞的手法は郵政民営化問題でも駆使され税負担増に怒る国民を公務員攻撃で「癒す」という許し難い手法を用いています。私たち労働者はいかにお人好しであってもこんな卑劣で国民愚弄の政治姿勢を容認するほど愚かではありません。文字通り怒りの一票を投じる大運動を旺盛に展開しようではありませんか。 さて、年一回の大会ですから総選挙のことに終始するわけにはまいりません。この一年間の運動総括については後に事務局長より提起されますが、いつにない今日的状況に呼応した新しい特徴がありました。 その第一は、景気低迷下での05春闘は厳しい結果を余儀なくされたものの「もう我慢の限界を超えた、一揆だ」と決起した「6.12青年円山一揆」や「どうしたら組合を作れるのか」との労働相談に見られたように、あきらめずに闘う姿勢を打ち出した新しい芽が見えたことです。「最低生計費試算調査」も試み、確信持った最賃闘争で京都では微々たると言えども4円アップの682円を勝ち取りました。第二の特徴は、この間の三菱自動車や関西電力にとどまらない大企業の社会的責任を追求した運動です。JR福知山線の脱線事故やアスベストの問題など当事者単産を中心にいのち健康・安全を守る緊急のとりくみを展開し、「働き方を見直す7月集会」では予想を超える参加があり、異常な現場実態を告発・交流しました。第三の特徴は、憲法改悪許さず、9条守れの大運動の広がりです。京都府内で結成された300近い「9条の会」の運動は戦後60年の節目での歪んだ歴史・戦争観を乗り越える幅広い共同を生み出し私たちに大きな勇気と展望を与えました。自民党が「自衛軍」を位置づけ九条を全面放棄する改憲草案を発表し07年の仕上げに向けた策動をゆるめない情勢にあって、この間の運動の広がりで改悪策動を食い止めている教育基本法問題とともに平和憲法堅持の世論拡大へ、まだ十分でない職場での「会」を広げていくことでの課題も明確になっています。そして第四に、この間の最大の組織課題である「組織の拡大・強化」問題は全体としてのバラツキがあるものの、京都総評の屋台骨的存在である京建労が7年ぶりに現勢回復をする貴重な教訓が生み出され、総評や各地域での労働相談活動を通しての労働組合の存在を鮮明にしていく様々なとりくみが展開されました。しかし、その組織化は労働者が直面する困難に対応する役割を果たす上では十分でなく「拡大カンパ運動」も含めて腹を据えた幹部先頭の実践が求められています。 さて、総選挙の後には改憲策動、労働法制の改悪、サラリーマン増税や消費税増税問題など激動の政治・くらし動向が予測されます。その国政の激変のもとで来年4月には京都府知事選挙があります。28年間続いた府民本位の府政がつぶされて同じ28年を経過した、いわば戦後の地方自治の有り様に決着をつける闘いです。多くは中小企業で働く京都の労働者の賃金・生活水準は全国レベルを下回る厳しさにあり、労働者の利益を擁護する府政を再建することは私たち自身の課題でもあります。また、年度内の結審を予定した「第39期地労委労働者委員不当任命取り消し訴訟」は来週の8日に第五回公判を迎えますが、この間の京都府政の偏向ぶりを示す顕著な事例であり、私たちは署名も一気に集めてこの裁判に勝利すると共に、憲法・地方自治法を基軸とした公正な府政そのものをつくる知事選挙に全力で取り組む決意を固めあいたいものです。私は、一週間ほど前に「民主府政の会」のメンバーの一員として高知県の橋本知事と懇談する機会を持ちましたが、高知では京都よりはるかに低い比率にあっても全労連系の組織から労働者委員が任命されています。マスコミ現場二〇余年を経歴した橋本知事は「民主主義のもとでは客観性・公正性・多様性が行政のスタンスとして大事にされるべき」と語られ、県民不在の政治姿勢を戒められ、中央天下りの官僚知事との明らかな違いを示されました。併せて、私たちの運動の柔軟さも示唆され今後の取組の教訓も得た有意義な機会となりました。 こうしたさまざまな課題と任務を持つ我が京都総評は京都の階級的労働運動のセンターにふさわしい役割を果たし、労働者と府民の期待に応える姿を事実を持って示していくことが今ほど求められているときはありません。困難をはね返し新たな展望を見いだす21世紀初頭の果敢な運動を新執行部先頭に展開されることを期し、また本大会に於いてこの間のたたかいの教訓を交流するとともに提起する方針を代議員の皆さんの積極的な討論でより深めていただき意義ある大会として成功いたしますことをお願いいたしまして、開会にあたってのあいさつと致します。