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労働相談事例集
妊娠したら解雇?!
 相談者のKさんは,出版関係の会社Gで働いて5年目です。給料はそこそこでも,福利厚生もしっかりしており,有休も取りやすい職場で,やりがいも感じられる仕事,子どもが生まれてもずっと働くつもりでいました。
 ところが,妊娠したことを上司に伝えると,初めのうちは「おめでとう,よかったね。」と言ってくれていたのに,産休や育休のことなどを相談し始めると,だんだんと雰囲気が変わってきました。
 「忙しい時期なのに,あなたが休んでいる間の仕事をどうやって埋めるの?他の人の負担も考えて欲しい。」などと同僚からも言われ,次の週には上司から「申し訳ないけど,あなたを雇い続けるのが難しいので,辞めて欲しい。」と退職を促されました。
 世間で言われる”マタニティ・ハラスメント”などとは無縁の職場だと信じていただけにショックが大きく,つわりで体調が良くないのに加えて精神的にも不安定になりました。パートナーからは「そんな職場は辞めて,しばらく出産と育児に専念したら。」と言われましたが,せっかくのキャリアをここで放棄したくないという気持ちもあり,とても迷っています。やはり女性が育児と仕事を両立していくのは無理なのでしょうか?


アドバイス
 妊娠や出産,そのための休みを請求したことをを理由として解雇することは,男女雇用機会均等法第9条(*)で禁止されています。
 会社は,「能力がない。」「勤務態度が良くない。」といった謂われのない理由をこじつけたり,Kさんが被ったような嫌がらせで自主退職に追い込もうとすることがよくあります。
 妊娠中はただでさえ体調が不安定なのに,ハラスメントを受けたり,職場に居にくい雰囲気を作られてしまっては,母子の心身に多くの負担がかかってしまいます。それゆえに,約6割の女性労働者が妊娠を機に退職の道を選んでしまうという残念な現状があるのです(出生動向基本調査2011年)。
 しかし,自身のこれからのキャリアや人生設計,これから出産する同僚のことを考えると,可能な限り会社と話し合い,退職せずに休暇を取れる方策を探ることをおすすめします。もし,ここでKさんがあきらめれば,会社の中に「出産=退職」という事例が根付いてしまい,多くの女性労働者がキャリアをあきらめたり,子どもを産まないという選択肢を採らざるをえなくなるからです。
 一人で話し合うのがしんどい,体調が悪く考えるのが難しいなどの場合は,女性労働者に理解があり,親身に相談に乗ってくれる労働組合や団体に助けを求めましょう。

 <<京都府男女共同参画センター>>
 ●女性労働相談(女性カウンセラーが無料で相談に乗ります。)
   電話:075-692-3437 月・火・木・土
   面接(予約制):月・火・木・土
   時間 月・木・土 午前10時〜午後6時
      火 午前11時〜午後7時
      (午前12時〜午後1時は休み)
 
 社員の産休や育休で不満や問題が浮上する前に,会社内で社員の誰かが妊娠したらどうするか,ということを先に話し合っておくことが大切です。

(*)男女雇用機会均等法第9条
事業主は,女性労働者が婚姻し,妊娠し,又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は,女性労働者が婚姻したことを理由として,解雇してはならない。
3 事業主は,その雇用する女性労働者が妊娠したこと,出産したこと,労働基準法(昭和22年法律第49号)第65条第1項の規定による休業を請求し,又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として,当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は,無効とする。ただし,事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは,この限りでない。