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残業(時間外労働)の管理


 京都室町の呉服卸の会社(従業員76名)に勤務するAさんからの相談。
 会社には残業時間を把握するタイムカードがなく,その日その日に上司からの指示で残業したり,指示がなくても自らの判断で残業をしてきたが,残業記録を正確につけていないため残業時間に相当する手当てが支給されていない。どのようにしたらよいか。


アドバイス


 日本の企業では,いわゆるサービス残業が広く行われており,従業員が実残業時間どおりの残業代を請求すると,昇進に差し障るなど不利益を被ることがあります。これは違法なことでありますが,悲しい現実でもあります。一人の従業員が会社に立ち向っても限界があるのが現状だと思います。
 従って憲法第28条で保障されている労働組合をつくって,労働条件全般を改善するか,全従業員がまとまらない場合は,個人加盟組合に加入して解決することも可能です。
 また,日本の企業では,管理職の肩書付きの従業員が多く,実質的には労基法第41条の管理・監督者に該当しないのに,それに該当すると思わされている労働者が多く見受けられます。労基法第41条の適用除外者に該当しなければ実労働時間に基づいて残業代を請求できるので,このような誤認を改める必要があります。
 正しく残業代を算定するには,正しく実労働時間を計測することが必要です。会社によっては,裁量労働制(労基法第38条2第4項)を法の定める要件を満たさないのに違法に導入し,実労働時間の計測をしていないところがありますので注意が必要です。このような場合は,労働者自身が実労働時間の記録を作成するなどしてください。

■社内における改善
 時間外労働の管理については必ずしもタイムカードによる管理を義務付けたものは労基法にも定めた条文はありませんが,上司による実態把握を監督署は指導しています。
 従って労働組合がないのであるから,従業員代表から会社に対して何らかの形で残業開始時間と終了時間を把握するように申し入れを行うと同時に,残業時間に見合った割増賃金を支払うよう話をしてください。
 また,残業は個人の判断でせず上司の指示で行ってください。

■証拠確保と請求
 残業代算定の裏付けとなる労働時間管理記録,業務記録,就業規則等を確保し,その上で請求する。日本の企業では,いわゆるサービス残業が多く,そのため実労働時間を正確に記載していない虚偽の労働時間管理もよくあるので,注意を要します。労働時間管理記録が現実より過小に記載された虚偽内容の場合は,これを覆すための実質的な証拠収集が重要となります。

■労働基準監督署の利用
 残業代未払いは,労基法第24条違反であり,労基法上の罰則(第120条第1号)が適用されます。違反を申告する場合はその事業所を管轄する労基署に申告者の氏名を告げて申告することになりますが,事実の申告に対して不利益な扱いを被ることはありません。監督署は申告に基づいて事業所に赴き調査し,違反が事実であれば支払いを勧告し,それにより支払われる場合もあります。

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