洛南タイムス
04年10月9日つけ


北小倉保育所の廃園条例を可決
宇治市9月定例議会最終日

民営化、4会派20人の賛成多数で




 宇治市9月定例議会の最終本会議が8日開かれ、一般質問ならびに1日の所管文教福祉常任委員会で論議され、今議会最大の焦点となった来年4月に市立北小倉保育所を民営化するための保育所条例の一部改正(廃園条例)議案を自民党市民クラブ、民主市民ネット、公明、新世会の20人の賛成多数で可決した。あわせて、民営化の実施延期を求め、同保育所保護者会などから提出されていた請願2件についても賛成少数で不採択を決めた。議決を経たことで、同保育所は選考委で決めた社会福祉法人・同胞会に移管することが正式に決まった。市は「保護者、法人を含めた3者でスムーズな引継ぎ保育ができるよう協議する」(委員会答弁)ことになるが、保護者の反発も依然強く、難航も予想される。

 この日の最終本会議では、共産党議員団から民営化予算が盛り込まれた市の補正予算に対する修正案(賛成少数で否決)が提出されたほか、同補正予算に対する質疑を共産2議員が行い、廃園条例に対して共産、社会議員が反対討論を繰り広げるなど反対姿勢を強く打ち出した。保護者会役員ら数人が本会議を傍聴、審議を見守った。
 同条例に対する反対討論で、山崎恭一議員(共)が「民営化は安上がりの保育を進めるものであり、保育への公的責任を放棄するもの。民営化方針の公正さ公平さに重大な疑惑も感じさせる」とした。
 池内光宏議員(社会)は「民間委託ありきではなく、公立保育所のより良い事業をどう進めていくのかを考えるべきである。公的保育そのものを揺るがすものであり、反対の立場を取らざるを得ない」とした。 
 補正予算質疑で、水谷修議員(共)が「無償譲渡する北小倉保育所に日差し対策のテントや足洗い場給湯設備がなぜ必要になるのか。公立だと必要でなく、民間保育園になるとなぜ必要なのか。公私間格差について、説明を」と指摘。また、移管先法人の内定段階で、法人が新規保育士の求人募集をしたことや選考委員会での審査に関して「選考途中で評定方法を変更しており、特定法人に配慮した判断をしたとの疑いを持たれかねないのではないか」などと質問した。
 粂保健福祉部長は「大規模改修などは、移管後に法人でやってもらうが、それまでの間の最小限の改修で引渡しをする事としている」と、予算化にあたっての市の提案理由を改めて伝え、「公私間格差などにあたるものでない」と理解を求めたが、「説明になっていない」として、質問を打ち切った。
 求人募集の件では、市が法人を指導した経過がさきの委員会でも市が答弁した経過があるが、同議員は「入札でいえば、指名停止措置など、それなりの対応が必要だ」と指摘した。
 宮本繁夫議員(共)も求人募集の問題を改めて問題視。市長答弁を捉えて、「『その当たり前』ということができない法人である」との言葉で、手厳しい指摘をした。また、同議員は旧中消防署跡建物(福祉サービス公社に貸与)の耐震補強費2780万円の工事費が計上されたことに対し、「貸与後に10年間分の家賃相当額の費用をかけて、借家として貸すのは疑問。貸与前に試算はしなかったのか。市が常にいう費用対効果の面でも、どうかと考える」と市の対応に苦言を呈した。
洛南タイムス
04年10月2日
付け

廃園条例、賛成多数で可決
宇治市会文福委、保育所民営化で審議

北小倉保護者会からの請願も不採択




 宇治市立北小倉保育所の来年4月民営化に伴い、開会中の9月議会に市が提出した廃園条例ならびに民営化計画の延期などを求める同保育所保護者会(櫻田正博会長)と市職員労働組合(小野敦委員長)から提出された請願の取り扱いを審議する市議会文教福祉常任委員会(帆足慶子委員長、8人)が1日、開かれた。質疑後の採決で、自民党市民クラブ、民主市民ネット、公明の5委員が廃園条例に賛成、賛成多数で可決した。請願2件には共産、社会の2委員が賛成したが、賛成少数で不採択を決めた。廃園条例は、8日の最終本会議で賛成多数で可決される。

 民営化移行による引継ぎ保育などに不安を募らせている保護者ら約30人が詰め掛け、代表の10人が委員会を傍聴。審議の行方を注視した。保護者らは「予想された採決結果になった」と委員会室を出た後、市役所前で「市長のための民営化はいやや」などと書いたビラを退庁する市職員らに配ったり、民営化実施反対をマイクで訴え、テレビ局の取材に応じたりした。 

 4月に民営化計画が示され、9月13日に選考委員会が移管先を社会福祉法人・同胞会に決めた。さきの6月議会で同保育所建物の法人への無償譲渡条例などを可決している。市は今後、廃園条例の本会議議決を受けて、「引継ぎ計画」を作成。保護者・移管先法人・市の3者でスムーズな引き継ぎが進められるよう話し合いを進めたい、としている。

 計画発表後、市は保護者会との6回にわたる説明会を持ったが、保護者不安を払拭するに至っておらず、この日の委員会で意見陳述した保護者は「具体的回答は得られておらず、不安を募らせている。市と保護者の溝は深まるばかりで、事務的でなく子どもの個性を考えた引継ぎを願いたい。急激な環境の変化となるため、3ヵ月の引継ぎ期間で良いのか、精査も願いたい」と発言した。

 1年間の引継ぎが必要とする保護者と3ヵ月と設定する市の考え方は、依然平行線が続いたままにある。

 委員会質疑では、浅見健二委員(社会)が民営化の先例市の枚方市の保育園で聞いた声を踏まえ、「子どもだけでなく、保護者や地域との関わりも含めた引継ぎも必要と考える。移管法人にとって、事前の十分な準備も必要」と指摘した。市は「零〜5歳児の年齢別で対応できるよう、引継ぎにあたる6人の保育士の3ヵ月分の費用、障害児については2人分として、引継ぎを11月からの前倒しとした5ヵ月分の費用を予算に盛り込んでいる」と説明した。「話し合いがまとまらない限り、引継ぎということにならない。見切り発車はしないよう」と求めた。

 原田副市長は「解決に向け、ぎりぎりまで努力する。見切り発車を頭において、やるようなものでない」と否定。粂保健福祉部長は「高水準の保育維持に公立の果たしてきた役割は大きく、公・民並存を方針として打ち出している。職員体制についても、しっかりとした保育ができる体制を考えてもらっており、保護者不安を一つずつ減らす対応を取る」と答えた。

 堀明人委員(自民党市民クラブ)は移管先法人に寄せられた保護者要望に対する履行の担保について、市の考えを質した。

 市は「より強く市が指導にあたり、訪問調査と書類提出を求めていく。障害児は一人ひとりの状況が違うため、それぞれの保護者とも協議フォローしていく」とした。同委員は「枚方市では、引継ぎに対して公立の保育士が協力的だったと聞いている、この担保も必要」と指摘した。粂部長らは「当然そのようにする。担保については、今後の引継ぎ計画のなかで、委員会などつくり対応したい」とした。

 宮本繁夫委員(共産)は、法人選考にあたって市に提出された資料の委員会への提出を求めた上で、質疑に入った。「選考にあたっての保護者要望がどう配慮されたのか」と質し、市は「保護者が心配される項目についてヒアリングを実施、評点に工夫配慮するなか、法人選考に反映した」と説明した。

 さらに同委員は「法人が選考され、内定段階で当該法人が保育士13人の新規求人募集を市内の大学に出していた。顛末をはっきりしてもらいたい」と、その後の対応で質した。市は「求人は正式決定後(議会議決後)にすべきもので、募集の取り下げを求め、厳しく指導した」と答弁。同委員も原田副市長に「見切り発車はしない」との答弁を求め、質問を打ち切った。

 河上悦章委員(公明)は「期間ではなく、密度の濃い引継ぎが必要だ」として、他市の状況を聞くとともに、民営化で保護者が提訴している事例が全国的に多いとして、その事由についても質した。市は「概ね、3ヵ月で支障はなく、裁判事例も引継ぎ不足を要因としたものでない」とした。

 質疑後、自民、公明の両委員が条例に賛成の討論を行い、共産、社会が反対討論を行った。

 自民委員は「移管後のフォロー体制をしっかり作ることで、保護者不安が払拭できる。新しい保育所づくりに一歩踏み出すべき」と討論。公明委員は「民営化は住民ニーズに応える新しい保育所作り。行政改革の視点からも必要。誠実な対応で不安払拭を」とした。

 共産委員は「保護者理解を得る努力がなされておらず、強引に進めるべきでない。労使交渉もできていない。到底良い保育所になるとは思えない」と討論。社会委員は「待機児童解消へ公立も民間保育園も増やし、切磋琢磨することが大事」などと話した。

洛南タイムス
04年9月27日
付け

「性急な民営化」に不満の声
北小倉保育所の保護者
宇治市議会常任委と懇談会
    
 宇治市立北小倉保育所の民営化問題で、同保育所保護者会(櫻田正博会長、79人)と市議会文教福祉常任委員会(帆足慶子委員長、8人)との懇談会が25日、同保育所で開かれた。

 来年4月に民営化、社会福祉法人・同胞会に移管される北小倉保育所の問題では、市が9月議会に同保育所の廃園を盛り込んだ保育所条例の一部改正を提案。文教福祉常任委で審議する運び。

 8人の常任委員全員が出席した懇談会には20人余りのお母さんらが参加した。

 保護者会の民営化対策委員を務める南隆一さんは「我々は民営化そのものに反対しているのではない。市のこれまでの進め方に強い不安や不信感を覚えている。民営化に向けた引継ぎ保育がわずか3ヶ月では不十分。来年4月からの実施を延ばし、時間をかけてくれと言っている。口約束ではわからないので文書で市に回答を求めても担保が明らかでない」などと指摘。

 居合わせた保護者たちが「経験の浅い保育士では目が行き届かない」「1年間はかけてなだらかな引継ぎ保育をしないと、就学を前にした子どもにも大きなストレスになる」「安心して安全に子どもを預けられる保育所にすることが大切」「始めに来年4月から民営化するという結論が先にあり、保護者に対する不安解消が何らなされていない」――などと発言。

 先の第6回説明会(今月17日夜)と同様の不満・不安の声があいつぐ展開となり、今年12月の市長選挙を控えた「市長公約」批判も飛び出し、出席した常任委員が保護者の言い分を聞き取り、メモを走らせた。
洛南タイムス
04年9月21日
つけ

移管法人への保護者不安、口々に
宇治市立北小倉保育所、民営化説明会

「民営は12月市長選への土産では」




 来年4月に民営化、社会福祉法人・同胞会への移管がされることになった宇治市立北小倉保育所の保護者会(櫻田正博会長、79人)に対する宇治市側の第6回説明会が17日夜、同所で開かれた。説明会は、深夜11時まで3時間持たれた。移管先法人の内定を受けて、最初の説明会となったが、法人選考委員会による移管先内定の経過を市の原田和久副市長も出席して説明、約45人が出席した保護者から意見を求めた。説明の中で、市は移管先法人が運営している同胞保育園=大久保町旦椋=が抱える職員の勤続年数などの資料も提示したが、保育士の平均年齢(26歳)に対する不安も訴えた。

 この夜の説明会には、市から理事者も出席したことから、保護者側が意向とする引継ぎ保育期間の延長に対し、「3ヵ月間」として、来年4月移管の市方針は崩せないとする市の考えに「12月には市長選挙がある。市の態度にはそれしか見え隠れしない。民営化をみやげに市長選に臨むような市長は要らない」といった言葉も一部保護者から飛び出すなど、市と保護者の溝が一層深まる様相も見せた。

 冒頭、原田副市長が「この間、保護者の皆さんの納得に至っていないことも承知していますが、民営化は行政改革、子育て支援施策展開への喫緊課題。9月議会に改正条例案を提案させていただいたが、改めて、ご意見を伺いたい」と話した。

 同胞保育園がキリスト教を保育方針に掲げていることについても不安の声を寄せた。市は「子どもの宗教化をめざすものではない。保育行事などにも宗教色が現れることはないとの確認も法人から得ている」として、理解を求めた。

 また、北小倉保育所の移管運営にあたり、同胞会が新卒保育士13人を募集している点でも保護者から質問があり、「子どもは新卒先生の研修の場ではない。民間委託されたばかりの北小倉で、やってもらっては困る。子どもを育てるには経験がいる。ベテラン保育士の経験、保護者に対する安心感が必要。当該法人のベテラン保育士は4人。新採保育士への指導に必要で、3ヵ月の保育の引継ぎの間に主任保育士が新採の指導にあたることにもなり、きっちりと引継ぎができる根拠もない」との声も。

 また、隣接する城陽市が18年度から実施する市立久世保育園の民間委託化で、事前1年、事後3ヵ月の引継ぎ期間を設定しているとの内容を市が議会に公表したことを伝えた16日付け本紙記事を持ち出した保護者が「なぜ、城陽でできて、中核都市をめざそうという宇治市でできないのか、悔しい。説明してもらいたい」と切り出す保護者も。市は「城陽市の民営化プランに沿い、進めようとしているもので、宇治と城陽の保育環境や中味も違うので」として、理解を求めた。

 また、9月議会に提案された廃園条例の取り下げを副市長に求める声もあったが、「できない」と答えた。

洛南タイムス
04年9月18日

市職労や保護者会に断続的に説明
宇治市、北小倉保育所の移管先内定で

手続き的に大きな山場へ




 宇治市は来年4月に民営化する市立北小倉保育所の移管先法人を選考委員会での選考結果として、同胞保育園を運営する社会福祉法人・同胞会=大久保町旦椋=を選定したことを13日に公表したのに続いて、16日の9月定例議会初日に北小倉保育所の廃園条例を提出したことから、16日夜に市職員労働組合執行部(小野敦委員長)ならびに保育所分会協議会、17日夜に北小倉保育所保護者会と断続的に説明会を持った。保護者会説明会は、9月3日に続いて、第6回目となったが、市当局からは初めて原田和久副市長も出席。法人選定への経過を保護者側に説明した。開会中の9月議会での改正条例の議決、法人の正式決定という手続き的にも最も大きな山場を迎えた。

 対市職労協議では、「保育士の重要な労働条件の変更を伴う」との市職労側の認識から、4月の民営化第1次実施計画の発表以降、2回の協議の場を双方で持ってきたが、詰めの協議には至っていない模様。「交渉がまだ入口段階で、実施計画内容の協議に入れていない」(10日付、市職労ニュース)状況下で、一方的上程に踏み切った」として反発を強めており、大挙約90人の組合員が出席して開かれた。

 協議交渉内容は明らかにしていないが、「労使協議が進んでない中、議会上程した理由を説明して欲しい」と求めたのに対し、市側は「タイムリミットを迎えているので」と、やり取りは依然として入口の域を出ず、約3時間もの協議は「物別れに終わった」(市職労)としている。

 17日には、市職労が移管先法人選考委員会(安藤和彦会長)に対し、3点で公開質問状を提出した。▽条例上何の根拠もない中、17年4月の民営化を前提にした募集、審査、選考がなぜできたのか▽どのような論議がされたのか、議事録と応募法人から提出された資料の公開をして欲しい▽3法人のなか、同胞会が選考された理由と審査内容を明確にして欲しい――との内容。

 質問状の提出について、「市の財産(保育所建物)を無償で譲渡するからには、選考にあたっての経過や資料、選考理由を明らかにするのは当然の責務だと考える」と、提出理由を伝えている。
 対応した市保育課は「選考委員会の任務はすでに終えている。対応については検討したい」と伝えた。

洛南タイムス
04・9・14付け
 
 
 
 
 
 

社会福祉法人「同胞会」に移管
宇治市、北小倉保育所の民営化で

西大久保団地で「同胞保育園」運営



 宇治市は13日の議会文教福祉常任委員会(帆足慶子委員長)に選考委員会としての選考結果として、来年4月に民営化する市立北小倉保育所の移管先法人を社会福祉法人同胞会(佐藤博理事長)=宇治市大久保町旦椋72=が運営する同胞保育園(小南進園長、定員150人)に決まったことを報告した。応募のあったのぼり保育園、ひいらぎ保育園を含めた3社会福祉法人について、選考委員会(安藤和彦会長、6人)で書類やヒアリング審査などを実施した結果、最も高い評定点数を得たとして、同胞会に移管することを決めた。

 同保育園は府営西大久保団地内にあり、昭和51年4月の開設。162人の園児を受け入れ、27人の保育士が勤務している。キリスト教を保育指針を掲げ、延長保育、障害児保育、一時保育、地域子育て支援センターなどの保育サービスを実施している。障害児保育は、開園当初から実施。知的障害者通所授産施設「同胞の家」の設置運営も行っている法人。

 この日、選考委員会から久保田勇市長に選考結果が報告され、市が議会委員会に報告した。
 質疑の中で、市は保育方針・内容、特別保育事業への取り組み、地域に根ざした保育所づくり、理事長及び施設長の資格、資金計画・経理状況など5項目の評点項目について、各委員70点ずつの持ち点で評定した結果として、同胞会の場合は420点満点で377点、89・8%の得点率があったと報告した。他の2法人については、79〜68%だったと伝えた。

 北小倉保育所保護者会から、保育内容などについて64項目にわたる要望が選考委員会に提出され、引受法人がきっちりと履行するよう市に担保を求める声が3日の保護者説明会でも挙がった。
 こうしたことから、堀委員(自民党市民クラブ)が「担保についての市の考え方は」と質した。市は「法人がきっちり、保育内容などを保護者に説明する義務があると考える。市も十分関与する」と答弁した。同委員は「法人の特色を生かしながら実りある保育を期待する。運営については、保護者意見を反映して欲しい」と求めた。

 宮本委員(共産)は、選考委員会としての選考結果の報告との位置付けを確認した上で「市民の貴重な財産を無償譲渡するのに、法人内定に至った選考経過を詳しく議会に報告すべきだ」として、詳細な報告を求め、市の答弁を受けて「保育目標などについて、どう評点で評価できるというのか」と詰めた。

 粂保健福祉部長は「評点項目には、さらに6委員による審査の視点も設けた。しっかりとした目標でもって保育しているのかを積み上げ、客観性ある判断をした」としたが、同委員は「法人の決め方は理解できない。法人を決めてから、担保を取るという順番がおかしい。選考委の報告を議会として聞いたということで、理解しておく」として、質問を打ち切った。浅見委員(社会)は、これまでから指摘してきた民間園で対応している完全給食が公立では一部を除いて実施できていない問題についても不満をぶつけた。

洛南タイムス
04・9・4付け

    9月議会へ廃園条例提案で
    宇治市

    北小倉保育所民営化で第5回説明会




 来年4月の宇治市の民営化移行方針に対し、4月実施の再考を求める要望書を提出している北小倉保育所保護者会(櫻田正博会長、79人)に対し、市の第5回保護者説明会が3日夜、同保育所で行われた。16日開会予定の9月定例議会に廃園条例の市提案が行われるが、6月議会で可決された保育所建物の移管先法人への無償譲渡を巡っては、差し止めを求める住民監査請求が2件提出され、住民訴訟も市議によって提起されるなど、新たに課題も突きつけられている。移管先法人の選考は先月27日に実質審査が終わり、近く選考法人の公表が所管の議会文教福祉常任委員会で行われることになっており、日程調整が進められている。

 これまで4回の説明会では、保護者側は「質問に対して、明確な市の説明はなされていない。民営化への不安は、全く解消されていない」と、引き継ぎ保育面を中心とした不安感を訴え、市への要望書を提出しているほか、6日夕には市役所周辺でビラ配布を予定するなど、街頭での宣伝活動を強化する構えも見せている。

 この夜の説明会は、これまでの説明会を上回る保護者が出席するなか開かれた。7月21日に、市の移管先法人選考委員会に保護者会から▽子どもの受け入れ▽保育内容▽保育サービス▽運営▽決定後の引き継ぎなどの要望事項として提出されていた計64項目について、現時点での市の見解を取りまとめたものを文書で示し、保護者の意見を求めた。

 移管先法人が決定していない中、市としての考え方を示したものだが、引き継ぎ保育期間が保護者が求める「1年間」に対し、従来からの考え方となっている「3ヵ月間」とする市の見解を除いては、概ね、保護者会の意向に「実施してもらう」などの表現方法で見解を回答で示したが、「市の見解をどのように担保するのか。移管先法人がきっちり履行するための保証として、覚書などで公文書化してもらいたい。そうでないと保護者意見が反映されるかどうか不安である」などとの声が一部の保護者からあがった。

 市は「市として、責任を持って対応する。覚書として形に残すのが良いのか、それとも今後の保育のあり方として移管先法人で示すのが良いのか、現時点では判断が難しい。市の責任において、どう担保するかは移管先法人が決まった上で決めたい」などと答えた。

 このほか、「9月の廃園条例の提案は、見送ってもらいたい」との声も出された。


親の立場から切実な思いを陳述
 宇治市立北小倉保育所民営化問題
 無償譲渡差し止めで監査請求


 保護者、市民の高い関心を集めている宇治市立北小倉保育所の民営化問題。保護者の1人として民営化に伴う障害児保育について速やかな情報開示と適切な対応を求め、監査請求した同市小倉町在住のA子さんが3日、弁護士とともに意見陳述した。「子どものことになると思わず涙が出てしまった」というA子さんの涙の訴え、果たして監査委員に届くのか。

 陳述は同日午後1時半から市役所で行われた。A子さんの弁護士が監査請求手続きのための法的論拠などについて説明後、A子さん自身が陳述。「心のトラブル、負担を考えると民営化はやはり心に傷を残す。不安にさせる。専門家の先生にも相談したが、パニック、混乱を起こすという。財政の効率化をいうのなら保育所土地の無償貸与、建物設備の無償譲渡ではなく、市民の財産なのだから売却とか貸すという方法を取るべき」と、我が子の現状にも触れながら訴え。

 過日、電車内でたまたま近鉄小倉駅で乗車した高校生が「僕が行っていた保育所が無くなるんやて。何かタダであげたり、貸したりするらしいわ」と話していた会話内容も伝えた。

 今回、1人で監査請求したことに対して地域の初対面に近いような人から無遠慮な質問や単なる興味本位の話題にさらされるという腹立たしさ、やり場のない気持ちにさせられたこともあったが、「我が子を愛しく思う親心を理解して欲しい。少子化や児童虐待が言われる中で市はどう受け止めてくれるのでしょうか」「北保育所に限らず、今後は民営化で同じような立場に置かれる障害児、保護者は出てくると思います。そのためにも…」と、障害を持つ親の立場から見た民営化問題を指摘する。

 監査請求の結果は10月4日に出される予定。監査手続きとは直接の関係はないが、陳述に対して監査委員会事務局はほとんど一方的に「録音させてもらいます」と、テープ録音。ところがA子さんが「公開するつもりはまったくない。家人に聴かせたいので」と、録音許可を求めたが、認められなかったという。公的な場で、しかも公的な監査内容なのになんとも不可思議な対応だったようだ。

洛南タイムス
04・8・28付け

来月早々にも議会委で公表へ
 宇治市立北小倉保育所の移管先法人
 第7回選考委で、事実上の審査終える

 
 来年4月に宇治市立北小倉保育所の民営化を実施するにあたり、市では「宇治市立保育所移管先法人選考委員会」(安藤和彦委員長、6人)で、市の公募に名乗りを挙げた市内3福祉法人を対象に、ヒアリングの実施や保護者会との面談など実施しながら、選考作業に入っていたが、27日に第7回選考委員会を開いた。

 この日、選考委員会としては事実上の最終の委員会として開催された。提出された資料やヒアリング結果をもとにした評点作業を中心に進め、各委員で論議を持った。今後は、委員長との調整などを踏まえ、報告書としての取りまとめの作業が残っているため、移管先法人の公表については、議会との日程調整後に開かれる議会文教福祉常任委員会となる見通し。来月早々にも開かれるものと見られる。
洛南タイムス
04・8・28付け

市財産の無償譲渡差し止め求め提訴
宇治市の北小倉保育所民営化で

片岡市議ら住民2人




 宇治市が来年4月の市立北小倉保育所の民営化にあたり、移管先法人への保育所建物の無償譲渡(約3800万円)ならびに土地(約900坪)の無償貸与をしようとする行為は「地方自治法上、議会議決があればこれを容認しているが、市の所有財産が不当に損なわれる事態に際して、市長は防止する責務がある」として、譲渡の差し止めを求めて片岡英治宇治市議ら2人が27日、京都地裁に提訴した。

 同市議は、6月市議会での譲渡条例の可決を受けて、同様の趣旨で市監査委員に監査請求したのに対し、監査委員は8月2日付で「無償貸与は、すでに市条例で定められており、無償譲渡は6月議会で可決されたもの。その必要性や必然性を問題として、監査委員が行為を事前に差し止めるよう市長に勧告するには至らず、請求に理由がない」との判断を示し、同市議からの監査請求を棄却している。

 これを不服として提訴したものだが、同市議は訴えのなかで、「市有財産の無償譲渡を議会での承認可決ということで、自治法では救済しているが、違法性はなくならない。なぜなら、宇治市議会は過去10年以上にわたり、市提案議案を一度も否決しておらず、チェック機能を果たしていない」としている。

洛南タイムス
04・8・12付け
宇治市立北小倉保育所
無償譲渡差し止めで住民監査請求
「民営化説明不十分、看過できぬ」
保護者が個人で市を相手取り提訴も

 民営化問題で揺れる宇治市立北小倉保育所。保護者の一人として民営化に伴う障害児保育について速やかな情報開示と適切な対応を求めている同市小倉町在住のA子さんが11日付けで、市監査委員に「宇治市職員措置請求書」を提出。保育所土地の無償貸与、建物設備の無償譲渡を「宇治市の裁量逸脱は明らか」「関係者との話し合い、説明が不十分」と、差し止め請求。A子さんは今後我fが子の人権保障などを訴え、裁判を起こすことも考えているという。

 請求書によると、北小倉保育所土地建物は保育園の土地建物設備として使用されてる財産であり(行政財産)、地方自治法(238条の4第1項)で無償譲渡も無償貸与も禁止されている、と結論。適正な対価なくして譲渡、化し付けてはならないとした地方自治法(237条第1項)に違反し、条例または議会の議決だけではなく高度の必要性が必要、と指摘。民営化を経費節減とする考え方に対しても「無償譲渡や無償貸与が地代や土地代金相当額を民間業者に与えていることと同じ」と反論。

 さらには「関係者との話し合い、説明が不十分で、保育や雇用に対する不安を増幅させており、看過できない」「違法な財産処分及び管理を防止するため、差し止めその他必要な措置を講ずるべき」と、監査委員に訴えた内容。

 A子さんは「片岡仕儀が訴えた内容とほぼ同じものであり、無意味かもしれないが、保護者個人として、訴えたかった。この件とは別に我が子の人権保障などで裁判をすることも考えている」といい、今後は市を相手取り、提訴することも示唆している。
城南新報
04・8・12付け
保育所建物の無償譲渡阻止
宇治市民の○○さん  住民監査請求へ
(記事本文には氏名ありますが転載では省略します)

 来年4月に来た小倉保育所を民営化する宇治市の方針を受けて11日、小倉町堀池に居住する無職、○○さんが住民監査請求をすることを決めた。

 ○○さんは地方自治法大237条2項の「普通地方公共団体の財産は原則として、適正な大過なくしてこれを譲渡し、もしくは貸し付けてはならない」を引用し、市議会で保育所が廃止になった場合の建物の無償譲渡や土地の無償貸与の条例が議決されたが、下位法規でこれを許すことはできない。なかでも、無償譲渡に関しては「建物の転売の可能性も否定できない」と指摘。無償貸与とともに必要性は説明されていないままで、市の裁量逸脱は明らかである・・としている。

 そのうえで「違法な財産処分及び管理を防止するため差し止め、その他の必要な措置を」と求めている。井関佳法弁護士は「良い結果が出ることを望んでいる。が、今後は住民裁判も視野に入れている」とコメント。

 なお、同様の内容で片岡英治市議(無所属)ら市民も6月に住民監査請求を行ったが、すでに棄却されている。
城南新報
04・8・6付け

建物の無償譲渡認める
宇治市監査委 請求2件を棄却、却下
 
 宇治市監査委員会はこのほど、市民から提出された「市有財産である建物の無償譲渡、土地の無償貸与を行わないように」とする住民監査請求を棄却した。

 保育所の民営化方針に従って、市が6月議会議会で提案した条例改正案に対して、6月28日付けで片岡英治市議らが「議決前に移管先法人の募集を行うことは地方自治法に違反している。市議会は10年以上にわたって市長提案を一度も否決しておらず、議会の機能を果たしていない」など指摘。監査委員に市長に対して建物の無償譲渡、土地の無償貸与を行わないように勧告することを求めた。

 市監査委員は▽すでに議決されているなか、建物の無償譲渡、土地の無償貸与を事前に差し止めることにならない▽市議会の機能に関しては監査委員として判断できない・・・とし、請求に理由がないため棄却した。

 なお、片岡市議ら市民が6月21日付けで行った住民監査請求は却下された。議決が未済のまま移管先法人の募集を行うこと、建物の無償譲渡を条件にした募集に異を唱えて、即時中止を求めていたもの。

洛南タイムス

04・08・03付
保護者会、不安と市不信訴える
宇治市北小倉保育所の民営化で

「市の説明、明確な回答なく一方的」



 来年4月実施で、宇治市の民営化方針が打ち出されている市立北小倉保育所の保護者会(櫻田正博会長、79人)は2日、「この間、4回にわたる保護者説明会で、保護者からの質問に対して明確な市の回答がなく、一方的方針のみの説明にとどまり、民営化への不安は全く解消されていない」として、来年4月の民営化実施に反対するとともに、実施時期の再考を求める要望書をこのほど市に提出したことを明らかにした。民営化に向けては、市はさきの6月議会で、保育所建物を今後運営移管することになる社会福祉法人に無償譲渡できる条例を提案可決。市の移管先法人募集には、市内の民間園3法人が応募し、月内決定の日程で、選考作業が進められ、9月議会で、同保育所の廃園条例が提案される予定となっている。

 この日、保護者会の代表11人が市役所で記者会見を行い、保護者会の総意として、考え方を説明した。市は6月議会で「北小倉保育所の保護者要望に配慮して、廃園条例は9月議会に先送りした」と答弁したが、5月末に開かれた第4回保護者説明会でも保護者から「廃園と建物譲渡の条例を分けて提案する意味が不明」との声が上がり、市の「準備行為」との説明に対し、保護者不信の増幅を招く結果となった。
 同保護者会では、先月27日に開かれた市の移管先法人選考委員会(会長=安藤和彦京都文教短大教授、6人)に保護者会として意見を述べるため出席したが、▽子どもの受け入れ▽保育内容▽スタッフ▽費用や保育サービス▽給食や弁当▽保護者との情報交換▽施設改修と整備▽移管決定後の引き継ぎと話し合い――など60項目以上にわたる意見や要望を保護者アンケートを集約するかたちで、移管先法人への要望事項として、同委員会に提出したという。
 この間の説明会でも、保護者からの声として、十分な引き継ぎ保育を実施するためにも市の「3ヵ月程度の期間を設けたい」との説明に対し、保護者からは「1年間は必要。そのためにも来年4月移管の再考を」の声が大半を占め、市に提出した要望書でも「移管先法人の保育内容や運営が適切であるかを市が直接責任を持って管理できる体制がなく、監査体制の整備以前の民営化には賛成できない」との意向を伝えた、という。
 保護者会では、応募に応じている3法人の情報開示を「早く知ることで、引き継ぎ保育の面からも対応が図れると開示を求めたが、事務に支障が生じるとの納得のいかない回答で、開示されなかった」と、市の対応に不信を募らせている。
 今後の対応としては、署名活動や9月議会に向けての請願提出などの取り組みを進めたい、としている。
京都新聞WEB

04年7月5日付
公立保育所の民営化 3法人が応募
宇治市、絞り込みの基準示す

 公立保育所の民営化をめぐって京都府宇治市は5日、運営移管先に3つの社会福祉法人からの応募があったことを市議会文教福祉常任委員会で報告し、「今後の選考に保護者の要望を反映させる」とした。「公正な選考が妨げられる」ことを理由に法人名は公表しなかった。

 5月末から今月23日まで市が公募した結果、市内で民間保育園を営む3法人が応募した。市保健福祉部は、学識者らを交えた移管先法人選考委員会で、1法人に絞り込む際の基準を示した。「保育方針」「資金計画」など5本柱の評定項目に基づき、職員の採用・配置▽保護者との連携▽引き継ぎ保育など30の審査項目を点数化する−としている。

 議員からは「選考の過程で保護者の要望をどう反映させるのか」などの質問が出た。保健福祉部は「選考委員会が保護者から直接にヒアリングする場を設ける。全てがすぐに解決できるかわからないが、要望を最大限反映させる」と述べた。
洛南タイムス

04・06・24付
3社会福祉法人が名乗り
宇治市

保育所民営化に伴う移管先募集で


 
 宇治市は来年4月に民営化する市立北小倉保育所の移管先法人の募集を23日で締め切り、3法人が応募した。法人名については、明らかにしていない。市内で民間保育園の運営実績を持つ12の社会福祉法人を応募対象に限定して、10日から受け付けていた。

 移管先法人を選考する選考委員会(会長、安藤和彦京都文教短大教授、6人)を4月末に発足させており、25日午後に第3回目となる委員会を開催予定しており、3法人の応募があったことを報告した上で、募集要項に沿った保育所運営の条件に合致しているかどうかのチェックや保護者意見を選考委員会が意見聴取することにしているため、今後の日程協議なども行うという。7月中に移管先法人を決める日程で選考を重ねる。

洛南タイムス

04・06・18付

民営化撤回求め、多様な角度で質疑
宇治市6月議会一般質問、最終日





 宇治市6月議会一般質問は17日、片岡英治(無)川原一行(共産)西川博司(民主)小山勝利(自民)宮本繁夫(共産)の5議員が質疑を展開。6月議会の焦点となった保育所民営化を「断念すべきだ」とあくまでも撤回を求める宮本議員が、条例提案された保育所施設の移管先法人への無償譲渡に「他の自治体の例からしても少数派。自治体というのは、転んでもただで起きないものなのに、現状での引渡しは、法人にはうまい話ではないか」と、約3800万円の評価額と公表された北小倉保育所建物の無償譲渡には理解できない、と追及。市長の執行権と議会の審議権についても言及して、議決前の法人公募行為を指して「準備行為だとして、審議権無視がこのところ目立つ」と、市の姿勢を批判した。


■「市民需要から基盤確保は市の責務」 宮本議員
 保育所施設の無償譲渡理由に市長答弁

 無償譲渡については、市が4月に発表した民営化実施計画のなかで「保育所運営の安定性と継続性を確保するため」と明記したが、市長は「民間保育所の施設整備については、国や府からの補助金以外の法人が負担する分について、法人が借り入れた借入金の元利金に対し市が補助金を助成することで、法人負担がないようにし、敷地についても多くが無償貸与をしている。保育需要が高いため、市として保育基盤の確保は重要な責務。施策的にも理解が得られると考えている」と、その理由を伝えた。

 宮本議員は、さきの3月議会での産業振興センターの設計入札にかかる契約の問題も持ち出し、「契約の準備行為だとして進め、住民監査請求があり、変更するに至ったのに、今議会でも同じことをしている。議会で何も決まっていないのに、何で公募するのか。議会無視ではないのか」と質問。

 さらに「学校の耐震調査結果にしても、議会報告を求めたが明らかにせず、情報公開請求があれば、出せるとの見解を示すなど、市の議会への報告のあり方をどのように考えているのか」と、不満をぶつけた。

 市長は「議決を要する事項は自治法96条1項に15項目列挙されている。列挙されていない事項についての団体の意思決定は市長その他の執行機関がすることになっている。議決を得て執行する事項と議決を得ず執行できるものとがある。議会への報告についても、結果や予定だけを報告するのでなく、市はどう対応するのかなど、方針や検討結果をもっての報告としており、資料提供と議会報告では大きな違いがあることを理解して欲しい」とした。